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映画「犬王」

観に行った!というざっくり感想。

私の感想としては「全てにおいてあと一歩頑張って欲しかった」といったところ。

序盤、盲目の人が音で感じる世界を視覚的に表現したアニメーションはとても好き。雨のところとか特に。

アヴちゃんの歌唱は流石と言った感じ。声当ても上手い!

ただ、序盤と犬王(アヴちゃん)の歌唱シーンに全振りしてる感が否めない。

友魚の前振り歌唱から犬王のパフォーマンスに繋がるんだけど、その友魚が歌っているシーンが退屈だった。

おそらく犬王の舞台に繋げる前口上としての歌詞に注視すべきなんだろうけど、純粋に曲が単調だし、映像も使い回しばかりで「長い」と感じた。

そして、気になったのがリアルとフィクションのバランス感覚。

熱狂する民衆の絵作りは浅黒く日に焼けて薄汚れ、歯並びは当然ながら現代人のように整ってはいない。当時の平民の容姿としてはかなり近い……?、実際に見た事がないから本当の所は分からないんだけど、現代一般人が前知識も無く南北朝時代の平民の姿を想像するならこんなもんだと思う。少なくとも私はそう。無知を代表して言う。

反してその民衆が夢中になる音楽や舞はロック調で、演出も謎の技術をフルに使っていてリアリティというものは無い。

このリアルとフィクションのバランスがちぐはぐしてるように感じた。

ディズニーなんかもこの気があるんだけど、絶妙な匙加減でしっかりエンタメに昇華されてる作品がほとんどで、大人も子供も楽しめるような作風になってると思う。

一方、犬王は作品全体を通してもどこかちぐはぐしてる印象。

民衆の身なりやら、漁村にたかるハエやら、美しくない部分までしっかりと描いておきながら(こういう所好き!)、ライブシーンでは当時存在しないはずのエレキギターがどこからか鳴り響き、西洋風のメロディが奏でられるのが違和感。

そこが革新的なんでしょ!と思われるかもしれないけど、一歩引いてみるとその真新しさが表面的に見えてしまう。

なんというか『新しい事』をしているように見せてるけど実の所『何かの真似事』でしかない感じ。

現代風の音楽を奏でて古い時代の人間を熱狂させるのは「Back to the Future」的だし、ロックパフォーマンスはQUEENとかの70〜80年代ロックバンドみたいだし、ダンスもひたすら西洋風だし、犬王はKISSか聖飢魔IIみたいだし。

こういうのって能楽(猿楽)やロックに対するリスペクトがあってこそなんだよね。この作品はなんだか中途半端に切って貼ってくっ付けて、それっぽさを出そうとしているのが透けて見える気がする。

せめて、エンディングは女王蜂がバチバチに格好良くキメてくれるのか!?と思ったら、歌無しだった。

そうか……。

かなり人を選ぶ映画

観る人によっては面白い映画だと思う。若い人だったら逆に新しく感じるかもしれない。

アヴちゃんの歌はとても格好良かったので、ファンなら一見。

監督のファンなら同じく。

個人的には70〜80年代洋楽ロックは好きなんだけど、ガシャガシャかき鳴らすならもっと和楽器が前面に出て欲しかったな。

細かい事を考えず、感性で観る映画なのだと思った。

曲、映像、シナリオ、演出。それぞれにあと一歩ずつこだわりが見えたら刺さってたかもしれない。

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